[メイン2] GM : 緑深市市街
休日ともあり、街には家族連れや私服の学生などが行きかっている。祭りの出店が立ち並び、商店街も営業中でそこそこの賑わいを見せている。

[メイン2] スピレ : さてその後、レンとエマの二人が心配要らないという連絡を取って。
スピレは……。

[メイン2] スピレ : 「お祭り行きたい! 行きたい!
 行こうよ~~~~!」

[メイン2] 紺野 純子 : 「わっ、わかりました!わかりましたから!」

[メイン2] 紺野 純子 : 時計を確認し。
「夜の神事とやらも、何やら怪しさはありますが……ともかく、思ったよりも遅くにあるとわかったおかげでこうして時間はできたことですし……それに、スピレさんもせっかく楽しみにしていたことですしね」

[メイン2] スピレ : 「純子は楽しみじゃなかったの?」

[メイン2] スピレ : まぁ楽しみだけど。それはもう楽しみにしてたわよ。
恥ずかしいから話を逸らす。

[メイン2] 紺野 純子 : 「…………あくまでも、目的は今日のコンサートですから。」
「…………。……全く楽しみにしていなかったといえば、嘘になりますが……」

[メイン2] スピレ : 「でしょ~!」

[メイン2] 紺野 純子 : 「う……とっ、とにかく!羽目を外しすぎない程度に……ですからね!」
「時間があるとはいえ、風邪でも引いたら元も子もありませんからね。」

[メイン2] 紺野 純子 : 来る時に持ってきていた暖かそうな上着を羽織る。

[メイン2] スピレ : 「マイクロビキニで街中をうろつくわけでもないし大丈夫だもん!
 それじゃあ加藤を呼びつけて……」

[メイン2] スピレ : そういうことで。
哀れにも招致された加藤と、巻き込まれた純子と共に祭りの街へと繰り出した……!

[メイン2] 加藤 : 「あいよ。お姫様方どこに行くんだい?」
呼ばれたので来た。タクシー扱いだがいつものことなので気にしていない。

[メイン2] 紺野 純子 : 「夜まで市内観光です。加藤さんもお疲れでしょうし、一緒にいかがですか?」

[メイン2] スピレ : 「おごってくれるよね~?」
座るのはやはり助手席。運転席にちょっかいをかけつつ。
間違いなく純子が座る方が安全運転になる。

[メイン2] 加藤 : 「市内観光ね、わかった。レンとエマの姿が見えないけど、まあエマが一緒なら大丈夫だろう」

[メイン2] 加藤 : 「………」
財布を中身を見ながら

[メイン2] 加藤 : 「あまり高いもんは買えねぇからな。常識的なもので頼む」

[メイン2] スピレ : 「えへへ~、楽しみだな~」

[メイン2] 紺野 純子 : 「ありがとうございます。……念のため言っておきますが、世界を目指すアイドルに常識なんて通用しませんよ」

[メイン2] 加藤 : 「…勘弁してくれ」
泣き言を言いながらも車を出すのであった。

[メイン2] 紺野 純子 :

[メイン2] 紺野 純子 : 「……これは」
ばたん、と扉を閉め、立ち並ぶ祭りの屋台を見渡す。

[メイン2] スピレ : 「金魚! わたがし! 
 りんご飴まであるじゃない! どこから行こうかしら!?」

[メイン2] スピレ : 行きかう人々と、スピーカーから響く音質の粗い祭囃子……
辺りは賑わっていて、アイドルの身分でもきっと早々バレない。

[メイン2] 紺野 純子 : 「はい。こんな風に縁日に参加するのも、いつ以来でしょうか……」
「あ……カタヌキです!懐かしい……!」

[メイン2] 紺野 純子 : 初めは色々言っておきながら、やはり祭りの雰囲気にあてられて高揚した気分のまま、スピレの隣を歩く。

[メイン2] スピレ : 「カタヌキ?」
知らない屋台の名前に首を傾げる。
人ごみに紛れないように手を取りながら。

[メイン2] 紺野 純子 : 手を握り返し、小さく振りながら。
「知らないんですか?こうですね、板状のお菓子を……」

[メイン2] スピレ : 「へえ~……やってみたい! 行きましょっ!」

[メイン2] スピレ : 加藤も急かしつつ、カタヌキの屋台の方に歩いて。

[メイン2] 紺野 純子 : スピレに頷き、店主に声をかける。
「すみません、三人分…」

[メイン2] 加藤 : はいはい。とため息を吐きながらもついていく。

[メイン2] スピレ : そして。

[メイン2] スピレ : 「……。」

[メイン2] スピレ : 「難しい…………」
爪楊枝を四苦八苦していじりながら。
周りの目が痛いわ。

[メイン2] 加藤 : ニヤニヤ笑いながら眺めている。

[メイン2] 紺野 純子 : 「ふふっ…コツがいるんですよ、端から慎重に…」

[メイン2] スピレ : 「二人して余裕そうにして……!
 み、見てなさいよ!」

[メイン2] スピレ : と、悪戦苦闘している間は口の方が手持ち無沙汰になる。
何の気なしにこちらを見守っている店主に声をかけ。

[メイン2] スピレ : 「それにしても、珍しい屋台があるのね。
 こんなに盛り上がってるお祭り、初めて来たかも!」

[メイン2]   : 「そうかい?そう言ってもらえるとうれしいねぇ」

[メイン2] スピレ : アイドルとして来てるわけじゃないのでキャラは作らず喋る。楽しい。

[メイン2] 紺野 純子 : 「はい。私も童心に帰った気分です」

[メイン2] 紺野 純子 : こちらも一時アイドルを忘れ、自然体で構える。

[メイン2]   : 「うれしいねぇ!かわいい嬢ちゃん達にはおまけしちゃうよ!」

[メイン2] スピレ : 「やった!」
と喜びつつ。
「このお祭り、紫藤が会長なんだっけ? ライブの時も思ったけど……すごい人なのかも……」

[メイン2]   : 「紫藤さんかい?彼はまだ30そこそこなのに良くやってるよ」

[メイン2] 紺野 純子 : 「ふふっ、ありがとうございます。」
「……ですね。会長ということは、[緑深市歌唱祭] から [緑深市うたい☆フェスティバル] を発展させたのも、彼の手腕によるものでしょうし」

[メイン2] GM : ついでに以下の情報も話してくれました
[紫藤社]について
地元の有力者。面倒見がよく、誰にでも分け隔てなく接する。かつて音楽大学で声楽を学んでおり、地元の合唱団などで指導もしている。
ここのところ少し思いつめた様子。疲れているのかもしれない。

[メイン2]   : 「だねぇ。でも最近お疲れのようだからちょっと心配だよ」

[メイン2] スピレ : 「そういえば、様子が変だったわね……」

[メイン2] 紺野 純子 : スピレに頷く。

[メイン2] 紺野 純子 : 「それだけこのお祭りに心血を注いでいる、ということなのでしょうか…」

[メイン2] スピレ : 少しばかりの心配さを顔に滲ませていると。

[メイン2] スピレ : パキリ……。

[メイン2] スピレ : 「あっ」

[メイン2] 紺野 純子 : 「あっ」

[メイン2] スピレ : 「あああああーーーーーーーー!!!」

[メイン2] 加藤 : 「あ~あ」

[メイン2] 紺野 純子 : 「すっ、すみません!もう一回!」

[メイン2] スピレ : カタヌキは砕けた。音を立て、粉々に。

[メイン2]   : 「はいよ」

[メイン2] スピレ : 「ありがと、純子ぉぉぉ……」

[メイン2] 紺野 純子 : 「いえ。今度はきっと成功しますよ」
にこり、とスピレに笑顔を向ける。

[メイン2]   : 「…うん?」

[メイン2] スピレ : 「んっ?」
新しい一枚を受け取りつつ。

[メイン2] 紺野 純子 : 「?」

[メイン2]   : 「ああいや、純子って。午前中に見に行ったフェスでそんな名前のアイドルが歌ってたような…」

[メイン2] 紺野 純子 : 「…………あっ」

[メイン2]   : まじまじと純子の顔を見ながら
「…べっぴんさんだし。もしかしてあんた…」

[メイン2] スピレ : 「……あ、ああ~! それは……!」

[メイン2] スピレ : (ど、どど……どうする!?)

[メイン2] 紺野 純子 : (えっ、えっ……スピレさん、どうします……!?)

[メイン2]   : スピレの方にも視線を向けて
「良く見たらこっちの嬢ちゃんもあの場にいたような…」

[メイン2] スピレ : 「…………」
「……」
ごまかすように浮かべてた笑顔が、少しずつ諦め顔に変わって。

[メイン2] スピレ : 「他の人には秘密だゾ☆」
自分の口に指を当てて。

[メイン2] 加藤 : 「ゴホン、ゴホン、ゴホン」
大きく咳払いをして

[メイン2] 紺野 純子 : 「……内緒ですよ。[緑深市うたい☆フェスティバル] の帰りで、ここへお忍びで」

[メイン2] 加藤 : 「こいつらもこう言ってるから、黙っていちゃくんねぇかな?」
ヤクザみたいな笑顔で

[メイン2] スピレ : (うおっ、こわ……)

[メイン2]   : 「かまわねぇよ。だって嬢ちゃん達はこの街に活気を与えに来てくれたんだろう?
 祭りに携わってるものとしちゃ、願ったり叶ったりよ」

[メイン2] 紺野 純子 : 「……ありがとうございます。こちらこそ、たくさん活気をいただいていますし」
ぺこり、と小さく礼をし。

[メイン2] 紺野 純子 : 「……そういえば、店主さんは長年このお祭りに?」

[メイン2]   : 「ああ。それなりに長くやってるねぇ」

[メイン2] スピレ : 「へ~っ! だから貫録があるんですねぇ~っ!」
しばらく素を見せていた相手だけど、まだ間に合う可能性はある。
スピレはスイッチを切り替えることにした。

[メイン2] 紺野 純子 : …………。スピレさん、すごいですね……

[メイン2] 加藤 : ちんちくりんな見た目なのにプロ根性はあるんだよなぁ。なんて思いつつ

[メイン2] 紺野 純子 : 「……それじゃ、昔からこんな風に賑やかなお祭りだったんですか? ほら、[緑深市うたい☆フェスティバル] に移ったのはここ数年って聞きましたから……」

[メイン2] スピレ : あ、それ気になる~!なんて同意を挟みつつ背中に威圧の気を浮かべる。
加藤……ちょっと失礼なことを考えてない……?

[メイン2] 加藤 : 「~♪」
スピレの視線に気づき下手くそな口笛を吹きながら目をそらす。

[メイン2]   : 「そうだねぇ。数年前までは緑深市歌唱祭だったっけ」
そう言って紫藤社から教えてもらった情報と似たような話を純子達に話す。

[メイン2] スピレ : 息をついて。

[メイン2] スピレ : 「歌唱祭……ああ、のど自慢の!」

[メイン2]   : 「そうだねぇ。嬢ちゃん達のステージの前にやってたやつだよ」

[メイン2] 紺野 純子 : 「ああ……そういえば、最初にのど自慢大会があって、トリを私たちが……」
そこまで思い当たったところで、ふと手を止める。

[メイン2] 紺野 純子 : 「…………あのナツキって人、大丈夫でしょうか」
ぽつりと。

[メイン2]   : 純子のつぶやきが聞こえて
「うん?嬢ちゃん達、あの子と知り合いなのかい?」

[メイン2] 紺野 純子 : 「……? え、えっと……さっき少し会ったというか、鉢合わせまして」

[メイン2] 紺野 純子 : 有名な方なんですか?と、少し踏み込んでみる。

[メイン2]   : 「有名というかちょっとねぇ…ここだけの話だよ?」
そう言って以下の情報を純子達に話す。

[メイン2] GM : [奥戸ナツキ]について
1年半ほどまえにこの街に引っ越してきた。家庭に問題があるらしく、不登校である。
周囲と馴染めておらず、そうしたところもあって紫藤社が気にかけているらしい。
紫藤社のことを大変慕っており、彼に認められたいと零したのを聞いたことがある。
歌がとてつもなく上手いらしい。紫藤社に歌唱の指導を受けており、今回の[緑深市うたい☆フェスティバル]で歌唱を披露する予定があったはずだ。

[メイン2]   : 「でもあの子は出場してなかったねぇ。なにかあったのかねぇ」

[メイン2] 紺野 純子 : 「彼女にそんな事情が……」
会長さんはまだまだだ、なんて言っていましたが……やはりその歌唱力、噂になって然るべきといったところだったのでしょう。

[メイン2]   : 「色々と難しい子だからねぇ。悪い子じゃないんだけどちょっとねぇ」

[メイン2] スピレ : 「あの様子なら……ね」
呟く。街の人から見てもあまり受け入れられていないみたい。

[メイン2] スピレ : 「それにしても……気にかけているのに、酷い対応だったのね。
 認められたいって言っているのに、ステージにも上げさせてくれないなんて……」

[メイン2] 加藤 : 「おれは雑務でお前たちのステージは見てないけど、なんか色々あったんだな」

[メイン2] 紺野 純子 : 「…………」
加藤に訴えかけるような目

[メイン2] スピレ : 「……まぁ、枠は私たちが取ったようなものらしいし。
 一番の拠り所から否定されるのも辛いでしょうね」
アイドルやってる以上、覚えはあるわ。
自分の見てほしいものが見てもらえる辛さくらい。

[メイン2] 紺野 純子 : 「…………スピレさん……」

[メイン2] 加藤 : 「でも前らはちゃんと役目を果たしたんだろ?だったらそれでいいじゃねぇか
 おれは自分にやれることをしっかりやることが大切だと思うぜ」

[メイン2] 紺野 純子 : 「…………。」
自分にやれることを、しっかりやる……

[メイン2] 紺野 純子 : すくり、立ち上がって。

[メイン2] スピレ : 「……そうかもね。慰めてくれて……
 ……ありがと」

[メイン2] 加藤 : 「礼なんていらねぇよ。それに、お前たちなら最初からわかってたと思うが?」
にやっと挑発的に笑いながら

[メイン2] 紺野 純子 : 「……行きましょう、スピレさん。」
「もしそれが気掛かりなら……きっと今からでも、私たちにできることを探すべき……なのかもしれません」

[メイン2] スピレ : 見透かされたように思って、じろりと怒りの視線を向けて。

[メイン2] 紺野 純子 : 「……えっ?」
少し焦ったように声が漏れる。

[メイン2] スピレ : 「……ふんっ! 純子まで付き合わなくたっていいのよ」
立たせてと言わんばかりに手を差し出して。

[メイン2] 紺野 純子 : それを見て、くすり、笑って。

[メイン2] 紺野 純子 : 「何を言ってるんですか。……彼女のことを全てわかってあげられるというわけではないですが、今こうして私たちが舞台で歌うことのできることのかけがいのなさとともに、歌うことのできない辛さがあることはわかります。私だって心配なんです……それに」

[メイン2] 紺野 純子 : 「私たち、みんなでひとつのアイドルですから」
どうぞ、と言おうとするように手を差し出して。

[メイン2] スピレ : 握る。伸ばしてくれるって思ってた手を。
不格好に型を抜いた板を口の中に入れて、もう片方の手を店主さんに振る。

[メイン2]   : その様子を店主は笑顔で見送る。

[メイン2] スピレ : 「…………純子の気持ちはわかったわよ」
……あんまり苦労とか表に出さないけど……純子も同じ悩みくらい抱えたことあるわよね。
それを目に入れてなかった気がして情けない気持ちになったわ。

[メイン2] スピレ : 「私たち、仲間だもんね」

[メイン2] 紺野 純子 : 「……!」

[メイン2] 紺野 純子 : 「はい!」
いつからだったか……アイドルとして共に輝くスピレも好きだけど。
そんな素のままの、飾らないままの彼女の言葉が胸に響いて。

[メイン2] 加藤 : 「…青春だねぇ」
おっさんは先に車へと戻り、ドアの前で2人が乗車するのを待っていた。

[メイン2] スピレ : (……おいしくない)
舌に乗せたカタヌキは、あんまり良い味がしなかった。
そういえばこんなの、他のお祭りじゃ見かけたことなかったけど純子はどこで見たのかな……なんて、思いつつ。

[メイン2] スピレ : 少し遠く感じた気がして、握った手の力を強くする。
手に温度を感じて、安心しようとした……けど。

[メイン2] スピレ : (……冷たい?)

[メイン2] スピレ : 違和感を覚えつつも。
加藤を待たせないように、考える前に足を急がせた。

[メイン2] スピレ :

[メイン2] スピレ :